コラム

これでもう恥ずかしくない!蕎麦を食べるときに役立つ知識

あなたは蕎麦の食べ方、どのくらい知っていますか?蕎麦というのは奥が深そうだ、そう思いながらもなんとなく食べている、という人もいますよね。自分ひとりなら「なんとなく美味しい」でも良いのでしょうが、例えば他の人と蕎麦屋へ行く時、ましてデートで、という場合なら基本的なことを知った上で、ディープな知識などもさりげなく披露できるといいですよね。 蕎麦屋でスマートにキメたい人や、恥をかきたくない人のために役立つ知識をまとめました。ぜひ参考にしてください。

1. 蕎麦を食べる時の基本的な順序

蕎麦を食べるに当たって公式なルールがあるわけではありません。ツウっぽい食べ方も色々あるので、絶対に正解という作法もありませんが、まずは一般的な作法をご紹介しましょう。

1.1. 蕎麦だけを食べる

いきなり蕎麦をつゆにつけるのではなく、まずは蕎麦だけを少量つるりといただきましょう。これは「蕎麦の食べ方」を指導するガイド的なものには必ず書かれていますから、日本人共通の認識と思ってよいでしょう。

この2,3本をつるりと食べる、という行為は蕎麦本来の味を堪能する、という目的で行うものです。ですから「正直よくわからない」と思っても、「この蕎麦の香りが鼻に抜ける感覚が好きなんだ」とか言っておけば「わかってる人」っぽいでしょう。

1.2. 汁につけて少しだけ食べる

続いて、蕎麦の下の方、四分の一から三分の一程度を汁に浸してすすります。この前に汁だけをわずかに口に含む、という作法もありますが、これはマニアックなので飛ばしても良いでしょう。

ただし、汁に浸し過ぎないというのは江戸の藪蕎麦の楽しみ方ですから、全ての蕎麦に共通なわけではありません。入った蕎麦屋が藪蕎麦系の味であればこの「全てに共通でない」という知識は口に出しても良いですが、その店がどんな流れの味か判断がつかない時は、静かにセオリー通り浸し過ぎないことだけに注意しながら食べましょう。

ちなみに蕎麦を手繰るのは、山盛りなら頂点から、平盛なら手前からが基本です。これによって必要以上に絡まることなくスムーズに食べることができます。

1.3. 薬味を付けて食べる

ネギ、大根おろしなどの薬味が必ず添えられていますが、これを最初に汁に全て投げ込むのは禁じ手です。少しずつ、都度そばに乗せて食べるのがスマートなようですが、全投入でなければ汁に入れるのもアリでしょう。

そもそも「汁に入れて良い派」と「汁に入れない派」が存在するようなので、平均的にはどちらでも良い行為です。ただしそば湯を楽しむのに取っておくためにも少しずつ使うことをおススメします。

1-4.山葵を付けて食べる

次は山葵を使ってみましょう。「山葵」は「さんしょう」と読んでしまいそうですが「わさび」と読みます。(「さんしょう」は「山椒」と書きます。時々蕎麦屋にも山椒が置いてあるので間違えないようにしましょう)

ねぎは汁に入れても良いと前項で書きましたが、山葵は入れてはいけません。汁に溶かし込むと汁の風味と山葵の香りの双方が打ち消し合ってしまうのです。

蕎麦に少量を乗せて、あるいは箸の先に少しつけて食べるのが一般的で美しい食べ方です。ただし山葵を使うようになった歴史をひもといてみると、昔は魚で取ったダシの臭みを消すために山葵が使われた、という説が有力ですから、現在のように臭みを感じることが少ないダシであれば無理に山葵を使う必要はないとも言えます。

1-5.蕎麦湯を飲む

蕎麦を美味しくいただいた後は蕎麦湯で締めましょう。蕎麦湯は蕎麦を茹でた汁のことで、蕎麦の栄養素であるルチンやビタミンB1、B2が豊富に溶け込んでいますから、栄養素的に考えて飲まない手はありません。味もそれほど濃いものでもないので、そのまま香りを楽しんで飲んでも良いですし、だし汁を入れたり薬味を足したりして飲むのも自由です。

2. 蕎麦に合うお酒って?

2-1 良質であっさりとした日本酒がよく合う

蕎麦屋で日本酒、大人のチョイスという感じで粋な飲み方です。江戸時代は庶民もこのような習慣を持っていたらしく、仕事を上がった職人たちによく利用されていました。

板わさやそばがきなどであっさりした日本酒を一杯か二杯いただき、締めにそばをさっと食べ、長居はしないでスマートに帰るというのも江戸っ子ならではの粋な飲み方だったようです。

現在でも良い蕎麦屋ほどそれに合う良い日本酒を置いています。元来蕎麦の風味やだしの香り、醤油の味わいは日本にジャストフィットしています。特に純米酒、大吟醸酒などで辛口、甘口などの極端でない酒が合うようです。とはいえ、日本酒も無限にありますし、好みも人それぞれ、その土地の特有のお酒を合わせてみるのも楽しいでしょう。

2-2 ビールとの相性も抜群!?

ちょっと意外かもしれませんが蕎麦とビールの組み合わせは実は良好です。蕎麦というのが締めに食べるイメージもあり、その時点でお腹いっぱいだからビールはもう入らない、と思ってしまうのは単に飲み会の延長の考え方です。

ここで書いているのはまず蕎麦屋に行ってビールを飲む、という提案です。何といっても蕎麦もビールも香りを楽しむという点で味わい方が共通しています。また、アルコール度が15度前後ある日本酒よりも5度前後のビールなら気楽に飲めるという意味でもちょい飲み感がある蕎麦とマッチします。

2-3 迷ったら店主に聞くのがベスト

美味しい蕎麦と一緒にお酒も楽しみたいけど、実際に何が合うのかわからない、そんな時はお店の店主さんに聞くのが一番です。その店の蕎麦の味を最も知っているのは店主さん以外いませんし、蕎麦にお酒は付き物ですから、きっと良いチョイスをしてくれます。もし話が出来るようなら、そのお酒を選んでいる理由や、そのお店ならではの蕎麦へのこだわりなども聞けるかもしれません。それこそ最高の肴として、酒も蕎麦もより美味しく感じられるシチュエーションです。

3. 蕎麦屋にある肴は絶品

3-1 出し汁たっぷりの「だし巻きたまご

蕎麦屋で飲む、という経験が無い方は御存じないかもしれませんが、良い蕎麦屋ほど良い肴を提供してくれます。前述した板わさは一見すると「切って盛るだけでしょ?」と思われるかもしれませんが、シンプルなだけに素材の味で勝負する一品で、お店の質を表すため蕎麦屋としては気が抜けないメニューでもあります。

蒲鉾は基本的に淡白ですが魚肉加工品なので日本酒との相性も抜群です。どんな醤油と山葵を使っているかでそのお店の格が見える場合もあります。さらにお店の特徴が出るのがだし巻きたまごです。蕎麦つゆの味を決める「だし」がふんだんに使われていますし、やはりシンプルなだけに味わい深く、日本酒にもよく合います。

3-2 蕎麦と相性抜群「天ぷら」

「天ぷら」はざる蕎麦やもり蕎麦、汁蕎麦とも絶妙の相性を持っています。セットで頼むのも良し、蕎麦は締めに取っておいて天ぷらでお酒を一杯いただくのももちろん良しです。

前の項で書いた板わさと違い、揚げる技能や衣の厚さなどで無限のバリエーションができる天ぷらもまた、お店の特徴を表すメニューですから、違う意味でお店の格を表します。旬の野菜や魚、えびなどがサクッとした衣に包まれている姿を考えただけでもお酒が進みますね。

3-3 お酒がよく進む「鴨料理

鴨といえば「鴨南蛮蕎麦」を想像される方が多いでしょうが、汁蕎麦の具としてだけでなく、肴として出している蕎麦屋もあります。「鴨焼き」「鴨ロース」などは日本酒にもビールにもジャストフィットします。

現在では食用の鶏と言えばニワトリですが、その普及は明治以降のことです。そのため江戸時代に発展した蕎麦文化にニワトリを扱ったメニューは含まれていないのです。

鴨と言えば蕎麦の薬味であるネギとの相性もよく、柔らかくて臭みも無いことが特徴です。ジューシーに焼いた状態でも、甘めに煮た状態でもお酒のパートナーとしてうってつけです。

4. まとめ

蕎麦の基本的食べ方や、お酒との相性についてご理解いただけたことと思います。とりあえずここに書かれたことさえマスターしていれば、恥をかくことはまずありません。今日から、堂々と蕎麦屋の「のれん をくぐりましょう。

もし興味を持った方は、蕎麦粉と小麦粉の割合や、関東と関西の違いなども調べてみると面白いと思います。蕎麦の世界はさまざまな知識やしきたりがいっぱいですし、お店ごとのバリエーションもあって飽きることなく楽しむことができます。江戸時代の流れをくむ老舗めぐりをする、という粋な楽しみ方もあるでしょう。

これを機会にディープな蕎麦の世界に、ぜひ旅立ってみてください。